2020.07.27 10:05逢魔時逢魔時「ほんと美男美女だよねえ。」「浮気なんてしようと思わないよねあれは〜。」「浮気してたとしても、相手がどんな顔か見てみたいわ。」「ほんとそれなー!」今日も賑やかな昼休み。話題はもっぱら、この学校でお似合いカップルと言われている先輩のこと。このクソ暑い夏の日差しの中、いつも中庭でランチする2人は誰もが日課のように見下ろして同じ言葉を吐く...
2020.07.27 09:59クレイジー・ラブ1あたしは別に、秀でた才能もなければ特別美人でもない。不細工でもないけど、だからってあたしより綺麗な人や可愛らしい人は五万といる平均的なありふれた顔してると思う。身長だけは高くて、普通に170はあるけど。でもそれって、なんの得にもならないステータス。特別目だった存在でもなければ、頭がすこぶるいいわけでもなく、スポーツに自信があるなんて特技も...
2020.07.27 09:58クレイジー・ラブ2「今日は本当に用事があるからこれ以上付き合えないんだってば。」「用事って?」振り返ってみるとロクな出会い方じゃなかったと頭の中の記憶に何度だって苦笑しつつ。けれどあの後から奏鳴くんに付きまとわれるようになって、あたしの身体からは包帯が消えたのは事実だ。強引に連れ出された街中で、本当にコンタクトを買いに行こうとする彼を引き止め。早々にファミ...
2020.07.27 09:55クレイジー・ラブ3にこやかな甘い笑み。そのくせバランス良く配置された眼差しはどこか冷たく昏い。愛させてくれるって…。そんなことひと言も言った覚えはないのに、有無を言わせない奏鳴くんの態度には何をどう言っていいのかわからない。ただこの人も大概女を見る目がないんだなあとは思う。あたしが見る目ないこと知ってて執着を見せるのだから。自分から僕はクソでクズで最低野郎...
2020.07.27 09:48貴方という秩序「仕事を辞めたい、と…。まだ言ってるんですか、如月さん。」「…………っ、」仕事を終え、仮眠を取ってから。あたしは定期的に通っている病院へと訪れる。あたしの心療を担当してくれる先生はおそらく三十代後半。ただその見た目はどう見ても若々しく、もっと歳をとってる可能性もあるくらい人気の先生だ。この人のカウンセリングの予約はかなり先まで詰まっている...
2020.07.27 09:35下心だけで勇者になった件について「あ、れ…?生きてる……?」鬱蒼とした森の中で起き上がった男は辺りを見回しながら、節々の体の痛みに記憶を蘇らせていた。(そうだ…。調子に乗って飲みすぎてそれから…。)男の名は、ノヴァ・メフィストしがない冒険者だった。この国には魔法というものがあり、それぞれ個々に属性を持った魔力の質で様々な役職につける。手っ取り早いのが冒険者だ。ギルドで身...
2020.07.27 09:29マダム・ロマンス和風建築の内装は奥ゆかしさがあり、けれど現代的なモダン和風。まだ建てられて間もないことがわかるくらい綺麗なものだった。玄関をくぐった左門は黒髪を耳にかけながら、内装を見回して目の前の人を見つめたのである。ウェーブの強い黒髪は長く落ち、大きな瞳はドールのように綺麗な黒。日焼け知らずの肌は引きこもりがちな生活をしていることがよくわかる。いや、...
2020.07.27 09:26主従恋愛理論「裏切る気は無かった。」静かに放たれた言葉に対して、どんな態度が正解なのか…。かける言葉なんて持ち合わせてるはずがない。「それでも君のことを考えなかった日はない。」そんなもの、慰めにもなりやしない。そう言いたかったけれど、それを言って何が解決する?根本的なことは変わらない。連絡が途絶えた2年と6ヶ月と11日。あたしはずっと待っていたのに、...
2020.07.27 09:24戦火の花000.戦火の花000.プロローグ世の中って不公平だ。金があればなんでもできて、金がないと妥協を重ねるしかない。権力があればなんでもできて、そんなもの持ってない人間の発言なんてノイズと同じ。地位があればなんでもできて、地位のない人間はただただ言いなりになるしかない。「顔色が優れないな。早めに切り上げるから笑顔くらい貼り付けなさい。」「はい...
2020.07.27 06:06独占欲の果て「ねえ、抱っこ」「もう幾つになったんだっけ?」「抱っこして」「やれやれ。甘えん坊は変わらないね」困ったように笑って私を抱き上げてくれる腕にすっぽりおさまることが何よりの幸せ。間違ってるのは百も承知。なんせ血が繋がってなくても兄妹なんだから。再婚したママの相手にも息子がいて、私より10歳も年上で…小さい頃は我儘ばっかり言って構い倒してもらっ...