Night lover番外編(話し相手③)

「日向くんは人を殺したいと思ったことある?」


「は?ないと思うよ多分。」


「俺割と本気でそう思うことあるんだけどさ、」


「え、怖い話し?」


「共感できないサイコパスって聞いたら一定数は猟奇殺人に結びつけがちじゃん?『心がないから酷いことができる』の最上級版だし。」


「まあ、そうだね。でも案外サイコパスって医者とか政治家とかに多いって聞くけど…。」


「それも本当らしいよ。でも俺、割と殺人鬼やれそうな気がする。」


「うん、やってそう。」


「怖がらないね日向くん。こういう話しされたら普通ドン引きとかすると思ってたよ。」


「いや、久遠くんがおかしいのは今に始まったことじゃないし。それにこれまでの話しを聞く限り、久遠くんって邪魔だと思ったら排除するんでしょ?それは物にも人間にも動物ですら過不足なく均等に価値が一定ってことだから殺したい衝動があったとして、きっと罪悪感すら抱かないんだろうなって思ってるよあたし。」


「すごいね日向くん。そこまで俺を理解してくれてるなんて…!」


「え、感動する場面だった?やっぱおかしいよ久遠くん。」


「その通りなんだよ。結局排除しようと思うと殺してしまう方が簡単だと思う思考になるだけで、それが世間的に違法であり、殺人っていう罪に問われるという理解はあるんだ。でもだからこそ一線を踏み越えることに躊躇いがあるかと問われると特にないんだよね。」


「じゃあどうして久遠くんは一線を超えないところで居るの?」


「そりゃあどっちかっていうと殺人犯するより、今の方が生きやすいからだろうね。」


「ふうん…。じゃあ生きやすさより上回るものがあれば躊躇わないってこと?」


「そうだね。意外と今も、殺して良いなら殺してみたいんだけどね。」


「いいよって言ったらあたしのことも躊躇わないで殺す?」


「うん、って言ったら首でも差し出してくれるの日向くん?」


「そうだね、それもいいかもね。」


「え…。………本気?」


「うん、真面目な回答だけど?あ、勘違いしないでね?死にたいわけではないから。あくまでも、久遠くんに殺されるなら別にいっかって程度のことだから。」


「それはそれでおかしいと思うよ俺。」


「久遠くんにおかしいって言われるなんて…!」


「え、そこそんな衝撃受けるところなの?」


「だって久遠くん、中学生に人を殺してみたいんだって話してるんだよ?おかしい通り越してやばい人だって自覚した方がいいよ。」


「そんな奴を普通に相手してる日向くんもなかなかのおかしい奴だって自覚した方がいいよ。」


「個別指導の先生変えてくださいって言って変更してくれるわけ?」


「しないね。え、俺のこと嫌なわけ?」


「嫌がられると思って話してたんじゃないんだね。今の話だけでも普通に脅しだよ?殺してみたいから殺させて?って聞こえるんだよ?」


「まあそうだけど、日向くんには聞いて欲しかったんだよ。脅したり嫌われたいわけじゃなくて、日向くんに話したかっただけだよ。」


「それが1番怖いんだよ久遠くん。」


「怖がってないじゃん日向くん。」


「慣れただけだよ。」


「慣れたからって殺されてやるのは別問題じゃない?」


「引っ張るねえ、それ。」


「………、思ってたよりだいぶ不愉快だったみたいでね。」


「え…。待って。真面目に怒ってる?!」


「ねえ、殺されてもいいって思うくらい日常のストレス感じてるってこと?それとも本当にただの軽口だった?」


「………っ。」


「怯えないで。日向くんに怒ってるんじゃないから。日向くんの心をそこまで疲れさせた原因がなんなのか知りたいんだよ俺。これでもちゃんと日向くんのことは好きなんだよ。愛着もある。だから日向くんにとって邪魔な人間がいるなら…、」


「ストップ!そこまで!久遠くん闇堕ちしちゃダメ!」


「…………闇堕ちって、君ね。俺は厨二病ではないんだけどね。」


「あたしのために怒ってくれたってことでしょう?まあ確かにストレスも感じてるしたまに発狂したくもなるけど。いい子ちゃんするって決めたのは自分だもん。誰も責められる人なんていないよ。」


「………………。」


「そんなに見つめても本心だから嘘はないよ久遠くん。」


「なんも言ってないのによくわかるね。」


「これだけ話してたらわかることも出てくるでしょ。」


「どうしてそこまで頑張るかな。無理をする価値のある人間たちなの?」


「………さあ?わかんないよ。でも頑張ってたらいいことあるかもしれないじゃん。」


「じゃあ今すぐ攫ってあげるって言っても日向くんは喜ばないね。」


「喜んだら攫うんだ?」


「そりゃあね。気に入った人間を誰かに壊されるのは我慢ならないもん。」


「相変わらず人間も物扱いなんだから。」


「日向くんには感情移入してると思うけどね俺。」


「極端すぎて怖いけどね。さっきの怒り方もそうだけど、久遠くんは共感できなくても感情はちゃんとあるよ。心がないとか、何も感じないってことはないと思うよあたし。」


「そう……、なのかな。」


「そうだよ、だから一方的な感情の暴力はよくない。さっきめっちゃ怖かった。」


「ごめん?」


「うん、でもあたしのために怒ってくれてありがとう。」


「!」


「久遠くん?」


「や……、うん。日向くんはそっちのがいいね。」


「そっち?」


「笑顔の方がかわいい。」


「…っ可愛いと思える心があったんだね久遠くん!」


「さっき俺に心も感情もあるって言わなかったかな日向くん?」


「かわ、かわ…、かわいいなんて誰にも言われたことないんだもん!」


「それはさすがに嘘でしょ……。って、本当に?」


「まじまじ見ないで!ほんとに!ちょっと反応に困ることさらっと言わないでくれる?!しばらくあっち向いてて!」


「あはははははっ。」


「爆笑?!」


「いや、ほんと日向くんってば可愛いね。」


「可愛い連呼すんな?!」




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