もしも黒猫様が悪女に転生したら13

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初日から一週間ほど経つと生徒たちは最初の印象と違って、僕を慕うようになっていた。

質問があればすぐ答えてやる程度のことは朝飯前だったし、何がしたいかを次々と言ってくるようになったので好きにさせてやったのだ。

勿論、ユランやリリーを護衛につけてな。

あとアレンに弁当を持って行くのも忘れてない。

「アーティ、噂になってるよ?Sクラスの担任が一週間持ってるどころか生徒たちが変わったって。」

アレンの情報の速さはいつも通りだ。

「そんなことより入口は見つけられたのか?」
「いんや。先に生徒として馴染まないと、でしょ?」

それなりにうまくやっているのか、アレンを呼ぶ声が響いている。

「そうだな。友達たくさんいるんだな。」
「フリだけならね。」

そういうのは得意だから、とアレンが笑いかけてくることに僕はキョトンとする。

「のほほんと大切に育てられた奴ら見てると虫唾が走る。まあ勿論、生まれも育ちも違うから単なる俺のやっかみだけどさ。」

最初から恵まれていたせいで人としての尊厳すら奪われる貴族の子供と、そんなものとは無縁ではあるが生きるためにがむしゃらだったアレン。

どっちもどっちのような気がするが、アレンが遠い眼差しをして呼ばれる声を無視している姿を見ると思わずポンと頭を撫でてやっていた。

「くだらないことに浸るな。今のお前は僕のものだろう?それでいいじゃないか。」
「………そうだね。」

ふわっと笑う天使のような微笑みを前に僕も静かに笑ってやると、アレンが一度僕に抱きついてきて、

「そろそろ本格的に動くから、情報が集まったら連絡するよ。アーティも、気をつけてね。」

そんなことを耳元でこそっと言われ、頷く前にスッと音もなく離れて行くアレンを見送ったのだ。

「僕もそろそろ動くとするか。」

元より長居する気のない場所だ。

まあ僕が動くというより、

「ユラン、リリー。頼めるか?」
「仰せのままに。」
「任せろ。」

二人頼みだけどな。

講師しか入れない場所があろうと透明化している二人には関係のないことだ。

連れてきてよかった。
ものすごく便利である。

そうして僕はアレンたちが情報を集める中、講師としての義務を果たしつつ待っていれば良いだけだった。

特に難しいことはない。

「先生〜!俺ギルドに入って冒険者になりたい!」
「じゃあとっととギルドに登録してきたらどうだ?手続きはわかるだろう?」
「でも向いてると思う?」
「そうだな。魔力量は言うまでもないが、経験が足りないだろうな。まあそんなものギルドに入れば低ランクからのスタートなんだしみんな同じだ。生き残るための準備やどんな些細な依頼にも危機感を持つことが大事だ。その点、お前は慎重な性格だから向いていると思うぞ。」
「よし!じゃあすぐ外出許可もらってくる!」

最近の生徒たちは何になりたいか、どう生きていきたいかの見聞が広まったことで僕に素質があるか質問してくる奴が増えた。

まあ、

「先生、あたしは何に向いてると思う?色々調べたんだけど特にこれといって自分を生かせるものがわからなくって。」

こうして目的が定まらない子も稀にいた。

「そうだな。お前が惹かれたものはなんだったんだ?」
「えっと、わたしは勉強することが好きなの。だからあんまり人と関わるのが得意じゃなくて…。でも魔力量が多いからって魔法ばかり習わされてたわ。」

本当は国の歴史や書物に触れているときが一番安心するんだと言ってくることに、

「じゃあ王立図書館の司書とかはどう思う?」
「え、勿論素敵だわ!でもお金を稼ぐためっていうよりそんなのわたしにとったら趣味の一環みたいに思うのよ。それじゃあダメじゃない?」
「ダメなわけないだろう。好きなことを仕事にできることが一番だ。趣味の一環として楽しんで稼げるなら尚更良いことじゃないか?」
「そ、そうかな。昔から逃げ場所が図書館だったの。本ばかり読んでないで魔法の練習をしろって言われてたから…。」

本当にいいのか不安で、と言うのだ。

あまりにも大人に影響され、抑えられてきた子供の中にはこうして親に決めてもらわないと何もできなくなってる子が大半だった。

特にこの生徒は自己主張が苦手な分、自分で決めることそのものに自信が持てないでいる。

「誰の目を気にしてるんだ?親はもういないのに。」
「それは、そうなんだけど…。」
「したいことをして何が悪い?みんなやりたいようにやってる。大人の顔色を伺って得られたものはなんだ?なにもなかっただろう?そんなこと気にしなくていいんだよ。」
「うん…っ。」

僕の言葉に涙するくらいなのだ。
どんな親に育てられたんだと聞きたくなったが、現実は誰も平等なんかではない。

裕福だから幸せなわけでもなければ、孤児だから不幸なわけでもない。

生徒たちはひとりひとり自分の将来を考えて僕と語らう時間を授業とし、様々な疑問をぶつけてきた。

「ねえ、先生は先生を辞めたら次は何するの?」
「ドラゴンの研究…の予定だ。」

今のところ、と付け足しておいた。
リリーとの約束があるからなあ。

「ドラゴン?!うっそ!すっげえ!先生ドラゴン見たことあんの?!」
「いや、無いぞ。頼まれているから付き合わないとならないだけだ。」
「じゃあドラゴンの研究が終わった後は?」
「多分、首脳会議に出る。」
「先生何者?!首脳会議って世界各国の要人が集まる年に一度の会議でしょ?!それに出席するの?!」
「まあな。面倒だが仕方ないんだ。大人の事情ってやつだから。」
「先生だって俺らと歳変わらねえじゃん!」
「ふん、歳なんて関係ない。実際、僕の方が博識でお前らの親の方が大人の皮被った無能だろう?」
「滅茶苦茶言うよね先生って〜!そういうとこ好きだけど!」

きゃらきゃら笑う声がよく響く教室になった。

僕がすぐ辞めることに最初は不安を覚えていた生徒たちだが、次第にそんな雰囲気も薄れていった。

僕が好き勝手やってる姿を見ていたからなのか、自分たちの決めたことを行動に移せばいいんだとわかったようだ。

縁が切れるわけでもないし見捨てられるわけでもない。

連絡を取れば会えるし話せる距離にいる。

まあそもそも、子守なんてこっちから願い下げだからな。

しっかり自立してくれ、と言った時には生徒たちも笑って応えてくれた。

「あ、ねえねえ!先生と一緒に入ってきた体験入学の生徒知ってる?アレンって子!」
「知ってる知ってる!魔法の腕はピカイチだし、模擬戦で先輩にも勝ったとか!」
「頭もいいらしいよ〜?しかも見た目は天使じゃん?!狙ってる人多いって!」
「女子はイケメンに弱いよなあ〜。」
「いやでもあいつは別格に見えたけど?」
「そっか〜?なんか胡散臭いんだよなあの笑顔〜。」

たまにアレンのことも話題になるので聞き耳を立てておくだけしている。

アレンはまあ、ガッツリ実戦を経験してきた奴だからたかが模擬戦で素人に負ける奴ではない。

…が、悪目立ちするよりいいだろうと実力を程々に発揮しているってところだろうか?

元より仲良くする気なんてさらさら無いといった態度でもあるからな。

「先生はアレンのことどう思う?」
「うん?僕?」
「そう!格好いいじゃん?」
「ふむ。」
「それにイケメンだし!」

イケメンだからと言う理由でどう思うか聞かれても困るんだが?

なんて思っていたら、

「それ、俺もぜひ聞きたいな。」

不意に聞き慣れた声がして振り返るとこの教室にアレンが入ってきたのだ。

噂をしていた生徒たちがきゃあきゃあ騒ぎ出したくらいには、たしかに見た目は最高なのかもしれない。

…が、

「なんでお前がここに?」
「今日からSクラスに編入することになったから。」
「は?」
「実力が認められて、体験入学だしSクラスにも入ってみないかって言われてさ。」

都合はいいでしょ?と目が訴えてくることに、僕も頷いていた。

まあ確かにアレンと情報を逐一話せるのはいいんだけど、

「というわけでよろしく〜。てかこれなんの授業?」

問題児が増えた事には頭が痛い。

きょとーんとしながら黒板には何も書かれてない教室を見渡したアレンには、生徒たちが僕のやり方を教えていた。

これにはアレンもさすがアーティと視線だけ向けて笑っていたくらいだ。

そもそもアレンに教えることなど僕からは何も無いし、このクラスではやりたいことをやってくれと言うのが基本的なことなので、

アレンにとっては動きやすい生徒活動ができるだろう。

「じゃあせんせ〜!俺サボってもいいですか?」

来て早々、堂々と手を上げながら問いかけてきたアレンである。

本人も僕と同じ考えのようだ。

「好きにしろ。」

そして咎めるわけもない僕に、他の生徒たちもいいの?!と口々に驚いていたが、

「言ったろう?やりたいことをやれと。別に授業中だから僕と語らわないといけないことはない。やりたいことがあるなら、そのための勉強に使ってくれてもいいし息抜きしたいならそうしろ。」

僕がそう言うと生徒たちは顔を見合わせて、じゃあサボりますと言う奴が出てきたり、

そうではなく僕と話したいからと残るものもいた。

「ふう…。やっと昼休みか。」

疲れたな、と思いながらやっとひとりになれると思って中庭のベンチにダラ〜と座り込むと、

「アーティらしい授業方法だったねえ〜。」

アレンが弁当目当てに僕のところへやってきたのだ。

用意していたものを渡せばその場で開けて僕の隣に座りながら食べていた。

「貴族として家で家庭教師くらい雇われてた連中に今更勉強を教える必要はないだろう?」
「そりゃそうだ。俺も動きやすいし。」
「ていうかお前をSクラスに誘ったのは誰なんだ?」
「うん?担任だよ。理事長にも掛け合って許可を貰えたって話し聞かされてさ。」
「ふうん。」
「なんか問題ある?」
「いいや。今のところは大丈夫だ。」
「すごい悪い顔になってるけど?なになに?なんかやらかす気?」
「後でわかることだ。お前は気にしなくていい。」

やるべきことをやれ、と言えばアレンは二つ返事で頷いて僕の膝の上に寝転がってきたのである。

「一応、講師と生徒なんだがな。」
「いいじゃん。どうせ一ヶ月の期間でしょ?俺だってアーティと居たいのにさ〜。生徒って窮屈だね。」
「お前からしたらそうだろうな。広い世界を知ってるのと知らないのとでは話が違う。」

ふんわりとしているアレンのプラチナブロンドの髪を撫でながら言えば、

「ということで、色々調べてたんだけど入り口の場所まではわかったよ。あと罠やセキュリティに関しても多分問題なく通過できると思う。」
「流石だな。もう突き止めたのか。」
「こういうのは得意だからね。」

起き上がりながらアレンは続きを食べ進めていた。

「でも地下の扉まではまだ行けてないからもう少し探っておくよ。念のためね。」

入口を見つけてある程度のところまでは潜入できた。

そこで警戒を怠らず調査を進める姿はさすがプロである。

まあ泥棒だけどな。

「わかった。ユランとリリーには会ったか?」
「たまーに、ね。あっちはあっちで色々とアーティのためにやってるみたいだけど詳しいことは知らないなあ。」
「そうか。ま、もう少し様子見といこう。」

そう焦ることでも無いしな。
なんて考えていればアレンが食べ終わって再び僕の膝に寝転んできたのだ。

「どうした?行かないのか?」
「最近一緒に居られる時間少ないし。うるさい魔法使いも騎士もいないし?思う存分甘えとこうと思って。」

にしし、と笑うアレンの悪戯っ子な顔に僕はフッと笑っていた。

部屋の中ではこんなのいつものことだったから特に気にも止めず、他愛のない話しをして休憩時間を過ごしたのだ。

だから、

「先生とアレンってどんな関係なの?!」

教室に戻ってびっくりした。

なんだその質問?と問いかけると、生徒たちが噂になってるよ!と言ってくるのだ。

「中庭でアレンを膝枕してたって!」
「あたしちょっとだけ見えちゃった!」
「ねえ、二人して付き合ってたりするの?!」

格好からして男にしか見られないから、僕がアーティスだと知らない生徒たちはボーイズラブできゃあきゃあ言ってるらしいのだ。

Sクラスの連中はそうじゃないと知っている分、素直に問いかけてくれるからありがたい。

まさかアレンと休憩を過ごすだけでこんな噂が広まるとは。

しかもついさっきのことなんだけど?

こういうネタはどこの世界も共通してみんな大好きらしい。

僕とアレンは顔を見合わせていたほどだ。

「そんなわけあるか。諸事情でアレンとは一緒に暮らしてるだけだ。」
「同棲までしてんの?!どこまで進んだの?!まさか先生!結婚するの?!」
「どんだけ話しを飛躍させてやがる。」

一番好奇心が強い女子たちにチョップを食らわせていれば、

隣ではアレンが男子に群がられていた。

「先生のどこが好きなわけ?てかあれを女として見れるのアレン?」
「あれでもアーティは女だよ?」
「愛称で呼んでんの?!公爵家の令嬢だろう?!身分差を気にしないのは先生らしいけど。」
「いやそこじゃねえだろ。アレンはモテるのになんで先生なわけ??」
「あんなに一緒にいて面白い人いないから?」

などなど、なんか僕のことディスッてる連中もいたようだが、アレンもアレンで否定しろ?!

「先生ってば騎士もいて魔法使いもいてアレンまで!すっごい羨ましいんだけど?!」
「馬鹿を言うな。そうゆう仲じゃないって言ってるだろ。」
「先生がそう思ってても向こうは違うかもじゃん!いいなあ!逆ハーレムじゃん!」
「なにがいいんだ。あいつらの扱いを考えたら一人の方が断然マシだぞ。」
「じゃあ先生の好きなタイプってどんな人?」

その質問にはアレン含めて男子生徒まで振り返ってきて興味津々に聞き耳を立ててくるのだ。

恋愛の話しはどこの世界でも耳が痛い。

「僕がそんな事に興味あると思うのか?」
「え?ないの?!」
「元より愛されたり好かれたりするとは微塵も思ってない。恨みはたくさん買ってるから嫌われることばっかりだぞ僕は。」
「先生マジで超現実主義だよね。好きなタイプくらいいるでしょ?!根本的に好かれないからなんて理由はおかしいって!」

何がおかしいのかさっぱりわからん。

どう考えたって僕の行動や言動を考えれば好まれるわけないと思うのだが?

それでも諦めない目の前の生徒の質問に僕はうーんと唸っていた。

好きになったのは前世でひとりだけだったし。

そもそも僕はなんであいつを好きになったのかすらわからんのだ。

滅茶苦茶猛アタックされて、逃す気ゼロのやつだったから諦めたに過ぎないし。

まあでも、そんな遠の好きだったところは…

「優しい人、かな。」
「ええー!めっちゃ普通!先生ならもっとすごいこと言うと思ったのに!」
「僕をなんだと思ってるんだ?ていうか自分たちの勉強はどうした?授業中なんだぞ今。」
「そんなの後でもできるもん!今は先生との恋バナタイムだよ!」

うんうんと周りまで頷いてやがる。

勝手にさせてきたから今更何か授業をしようとも思ってないが、

「この手の話しは苦手なんだがな…。」

うーん、と唸る僕にそれでも生徒たちは質問をやめなかった。

「でも先生は貴族なんだから婚約者とか居るでしょ?」
「継承権がある僕と婚約できる男はどのくらい居ると思う?」
「あ、」
「しかも悪女という評判が勝手に闊歩してるんだぞ?誰が嫁に欲しがる?」
「あああっ!もう!先生何やってるの!?婚期逃したらどうするの?!」
「結婚する気なんて生まれた時からないから安心しろ。」
「どんな理屈?!ひとりで死んでいくとか寂しすぎない?!」
「死ぬ時はみんなひとりだろ?」
「そこで現実主義いらないから!」

なんで僕が非難されているんだろうか?

結婚することが当たり前の貴族令嬢からすれば確かに非常識なのかもしれないが、

「好きでも無い奴と結婚させられるくらいならひとりのほうがマシじゃ無いか?」
「それは相手によるじゃん!好きになれるかもしれないし!」
「夢みがちなことでなによりだ。」
「もう!先生ってば恋バナをわかってない!」
「だからこの手の話は苦手だって言っただろう?」

何に期待してたんだよ、と続けると女子生徒はむうっと膨れていた。

「でも実際さ、結婚しなかったら先生どうなるの?魔法使いも騎士もアレンだっていつかは結婚するかもじゃん?寂しく無いの?」

そこを問われると僕も黙り込んでいた。

そういえばそんなこと考えもしなかったなと。

でもまあ、

「寂しいだろうな。」

うむ、と頷いていた。
正直な気持ちだったからだ。

「でも、」

あいつらにとっての幸せを奪う気もないぞ、と言いかけたのだが…

「大丈夫。俺も結婚なんてする気ないし?アーティをひとりになんかしないよ?」
「同感だな。俺も別にアーティ以外の人間と親しくするつもりもないしな。」
「私の場合は騎士の誓いを済ませています。主人を放っておいて家庭を持つなど言語道断です。」

…と、僕の周りにアレンと透明化していたリリーにユランが集まって上から見下ろしてきたのである。

こればっかりは女子生徒がきゃーっ!と黄色い声を出して騒がれてしまった。

思わず見上げる僕の顔はマジふざけんな、というものだったはずだ。

「お前らな、勝手に出てくんなよ。」
「寂しいなんて言われたらちゃんと大丈夫だよって言っとかないとって思うじゃん?」
「寂しい想いなんてさせないから安心しろ。」
「アーティス様に付き合える男性など、私たちくらいでしょう?」

口々に勝手なことを言ってくる3人に僕が何か言うよりも女子の声で掻き消されてしまう。

「先生愛されてる〜!」
「いいなあ〜!あたしも美男子侍らせてみたい!」
「3人揃うと圧巻だよね!それに先生も見劣りしないし!妄想が膨らむわあ〜っ!」
「ねえ!キスはまだなの?!デートは?先生って顔キレーだし、女らしい格好したらいいのに!」
「化粧したら映えそうだもんねえ!あ、そうだ!先生、あたしたちに化粧させてよ!!!」

興奮している生徒に言い募られることに、そろそろ僕も限界が来ていたので、

「却下だ!もうこの話しは終わり!早く自分のやらべきことをしろ!」

ピシャリと一喝してから空気を変えたのである。

僕の一言にみんなして「えー!」なんて言っていたが、そもそもこんな話しの何が面白いのかさっぱりわからん!

この3人はたまたま一緒にいるだけで別にそんな関係になりたいとも思ってない奴らなのに。

あれよあれよと飛躍させられていく話しを聞くこっちの身にもなってほしい。

僕はそのまま教室から出て、生徒たちの文句を遮断したのである。

当然のように付いてきた3人にもジロリと睨みつけることをしてみたが、

「実際アーティは俺たちの中だと一番好みのタイプって誰なの?」

アレンが全く空気を読まずにそんなことを聞いてきたものだから、残り二人の視線が突き刺さったのだ。

「そんなくだらないこと聞いてどうするんだよ。いいから仕事に戻れ。」
「くだらなくなんかないじゃん!知りたいー!」
「俺もそこは気になるな。いや、でも俺はまだアーティと知り合って日が浅いし…。」
「私以外に誰がアーティス様に仕えられるでしょうか?もちろん、私ですよね?」

…と、それぞれが全く違う反応をしてくるのだが。

「いいからさっさと行け!」

もうこの話しはいいって言ってんだろうが!

僕が誰を好きだろうがどうだっていいことだ。

元よりこの3人をそんな対象にすら見てないのは普段からこいつらが一番よく知ってるはずなのに!

僕の一喝に3人は渋々と散らばっていき、今日一番疲れた瞬間だったと僕は深いため息をついたのだった。


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