もしも黒猫様が悪女に転生したら26

さて、結果だけ言うとルーと共闘した今回の作戦はうまくいった。


各国の主要人物たちがリリーの元へ群がっていた光景が現在はガラッガラである。


「魔法陣さん凄すぎな…。」


自分の能力になったとはいえ古代兵器の威力にはドン引きしてしまったが、まあ結果良ければ全て良しである。


過程をざっくり説明すると魔法陣さんの力を使って各国へ擬似的に攻撃を試みた。


もっと言うと魔物を召喚し、各国の主要都市を襲わせたのだ。


ただ本物の魔物ではなく魔法陣さんの力、創造で作り出した擬似魔物だ。


だから僕の意思に従って行動するので人を襲う素振りはさせても本当に殺したりはしていない。


ま、偽物とはいえ急に魔物が大量に街へ入ってくればパニックになるのは必須。


そうして現在、うちの城内でリリーを勧誘している主要人物たちに襲撃されている連絡がいくのも時間がかかることではないという話しだ。


最初こそ驚き、本当に確かな情報なのかと疑ったりすることから始まったが、


情報の正確さと被害の拡大を聞くなり慌てて帰っていくという光景が広がる。


ものの数時間で城内は空っぽとなり、静かになったものだ。


「アーティ、これはどういうことだ?あと2日…、いやもう1日の我慢だと思っていたんだが?」


急に静まり返ったことで塔から出てきたのはもちろんリリーである。


ゼンが先頭に立って外部を確認し、リリーを連れてきたのだ。


「ん?ああ。リリーを勧誘することは許可したが攻撃しないとは言ってないだろ?」


裏でリリーの手引きをしたり、取引に割って入ることはないという約束はした。


どの国もリリーという最終兵器になり得る魔法師が欲しくてたまらない、その欲望に漬け込んだのが今回の会議だったからな。


まあ勿論、それらはあくまでリリーの意思に委ねるものというルールを敷いた上でのこと。

その約束を破る気なんて毛頭ない。


むしろそれを破るとなれば僕がリリーを信用していないと示しているようなものだ。


「3日間、口出す気はないし今もその件はリリーの意思に委ねているさ。ただ、もっと面白いことを思いついてしまってな。」


聞きたいだろう?とニヒルに笑いながら庭先のガーデンテーブルでお茶をする僕にリリーもすかさず察してクツクツと笑っていた。


そのまま近寄ってきたリリーは僕を抱き上げて、僕が座っていた椅子に腰掛け、わざわざ僕を膝に乗せて座るのである。


相変わらず、身内に甘いというか触りたがりというか。


サラッと落とされた長い黒髪の合間でニコニコと見下ろしてくる顔は安堵と疲れもあるが、それよりも信頼とワクワクに満ちていてリリーらしいと思った。


思わず僕も笑ってしまい、これまでのことを話したのだ。


「リリーを手に入れたから安心、なんてことはないんだということを身をもって体感してもらったんだよ。」


とは言ってもこれを思いついたのはルーに接触され、椿だと分かった時だ。


それまでは本当に3日間をやり過ごすつもりでいた。


でもルーと手を組めるのならば、もう少し攻めたことをしても良いのではないかと思ったのだ。


リリーを諦めてもらうための3日間の中で、リリーにそこまで価値なんてないと思わせる1日を作りだす。


つまり魔法陣さんで各国へ襲撃を仕掛け、どんなに腕のいい魔法師がいても自国の防衛手段が働かない限り無意味だということを思い知らせたのである。


「なるほどな。でもそんなことをして大丈夫なのか?確かに魔法を知り尽くしている俺でも国の防衛を1人で担うというのはいささか負担が大きすぎることだが。かと言って身をもって知ってもらうなど…。」


リリーが心配する気持ちもわかる。


だって自分の国以外へ戦争を仕掛けているようなもんだからな。


誰も殺めていないとはいえ、各国をパニックに陥れて、関係のない一般市民に混乱を与えたという面ではかなり罪深いことだろう。


まあそれでも、


「僕にとってその他大勢なんてどうでもいい。リリーが安心して居たい場所に居られる環境が整う最速手段だっただけだしな。」


そのための強引なやり方だったが、そのおかげでヘイトはリリーから外れた。


リリーを勧誘することよりも自国の危機に対する対処に奔走している要人たちだ。


ことが治ればリリーの元に舞い戻るのではなく、襲撃の原因を探り出すだろう。


僕が言い切るとリリーは無言になり、そして触れるだけ…というか押し付けるだけのキスをしてきたのである。


そこにいやらしさはなく、欲もない。


単純に子供が嬉しくて、うれしすきて、表現し切れない感情を押し付けてきたような感じだった。


「アーティがそこまで俺のことを考えてくれていたとは…!」


ほらな。


感極まったとばかりの嬉しそうなリリーを見ていると、キスひとつに敏感に反応する前世の概念が崩れていく。


ここは異世界で、魔法があって、見た目は大人のくせにもう何百年と生きているにも関わらず子供のようなリリーが出来上がる場所だ。


ぎゅうぎゅうと抱きしめられる体温がこんなに心地いいと思ったこともない。


まあ最初からそうだったが、僕はどうにもリリーには甘いかもしれない。


「リリー、一応聞くがキスの意味は知っててやったのか?」


「意味くらいわかるぞ!親愛、友愛、愛情を示す行為であろう?俺はどれもアーティに持ってるぞ!」


「うん、そんな感じだと思った。」


いやらしさの一切がなく、ただ純粋に愛情を持って接してくれるのがリリーである。

そりゃ甘くなってしまうわ…。


「先生!師匠にばかり甘すぎでは?!ずるいです…!」


それを側で見ていたゼンがすかさず声を上げたこともまあ予想の範囲内というか…。


僕を慕ってくれているのは十分承知しているからこそ、ゼンもまた構ってちゃんである。


さすが師弟なだけあって、こういうところはリリーとそっくりだ。


嫉妬むき出しで近寄ってきたゼンを見ると小さく笑って頭をポンと撫でてやっていた。


「そうだな。ゼンもご苦労だった。リリーの子守りはお前にしか任せられないしな。」


「それはそうでしょう。生活能力皆無な人なので。」


「うおい?!2人して酷くないか?!子守って…!俺ほど凄い魔法使いはいないというのに!」


リリーのいじりがいがある会話でゼンも笑みを取り戻し、僕に褒められることを素直に喜んでいた中。


「あらあら、お邪魔だったかしら?ティアちゃん。」


庭先にやってきたルーの声音に2人が急に警戒心をむき出しにするものだからため息をついてしまう。


「2人とも、ルーは大丈夫だから。ちょっと控えててくれ。」


先走らないように2人に声をかけつつ立ち上がると、ルーがほくそ笑んで目の前まで近づいてくる。


「まだ序盤だっていうのに気を抜くのが早すぎないかしら?」


「誰が気なんて抜いてた?余裕を持って時間を有意義に使ってたと言って欲しいな。」


フンと鼻を鳴らして見つめる先ではにっこりと笑うルーがいる。


見た目は人形のように美しいその姿は、前世の椿も重なってしまう。


そりゃそうだ。


相変わらずこの女は外見の美しさとは裏腹にその中身は狡猾なのだから。


異世界にきてここまで僕に緊張感を与える存在なんて居なかったしな。


「ほんと言葉の使い方が上手いわね。まあいいわ。さっさと次の準備に取り掛かりましょう。」


「……ルー、お前は国に帰らなくていいのか?確かに前もってやることは伝えていたがそれでも…、」


そう、ルーの国にもきちんと襲撃は行なっている。


もちろん手を緩めることなんてしていない。


そうしないとルーと手を組んでいると伝えてしまうようなものだからだ。


だからこそ、この襲撃と混乱の期間は長めに取っておく必要があると思っていたのに、こんなに早く姿を見せるなんて…。


僕の怪訝な顔にルーはそれこそ笑い飛ばしていた。


「心配してくれてるの?それとも計算外のことだったのかしら?まあどっちでもいいわ。あたしの国の防衛はあたしなんて必要ないのよ。そう"育てている"からね。」


綺麗な微笑みの下の狡猾さを僕は何度も経験しているが、こうしてまた目の前にするとゾッとする。


確かに椿であればやりそうだ。


女王制度の国で何番目か知らないが姫として生まれた瞬間から考えていそうなことだ。


城は椿にとっての遊び場であり、守るべき家であり、自分が後に座る女王としての象徴的な場所。


であれば、女王ではなく城を守れと教え育てるはずだ。


それは民たちが目に見えて明らかな象徴であるから。


どんな襲撃が来ても女王のことではなく民のことを優先し、混乱させるようなことを極力避けるルールを敷く。


こういうところだけを見れば立派な女王の素質があると言えるし、きっとみんなから信頼されているのだろうことも推測できる。


まあ実際、椿という女のことを何も知らない人間からすればルーはとても良くできた女王候補だろう。


だがしかし、こうして目の前でにこやかに笑っている女は自国の安全を手放しで放置できる状況を前もって作っていたとも言えるのだ。


そう、それこそ…


「ティアちゃんの言葉を使うなら、『余裕を持って時間を有意義に使うため』にあたしはここにいるのよ。」


「……っ。」


その微笑みが一番ゾッとする。


わざわざ先程、僕が告げた言葉を使うあたりが本当に嫌なやつだ。


自国のことなど放っておいて今この瞬間、誰もが状況把握に努めている時間を悪巧みに使う悪女こそ椿である。


「どうせ幻術であることは有能な魔法使いがいればすぐに気づくわ。一番気にかけるべきは民の混乱。これは幻術だから慌てる必要ないですよって国全体に伝えられるかどうかが肝よね。となれば早くてもそうねえ…。そつなく対処が出来れば4日が最速かしら?」


「よく言うな。4日どころか1日も経たず現在進行形で僕の目の前にいる奴はどうなる。」


「あらあら、それこそ今更じゃなくって?この猶予をどう使うかがミソでしょう?」


うふふっと笑うルーの美しい微笑みが一番恐ろしいと言えるだろう。


リリーはまあ置いておいても、あの有能なゼンがルーの微笑みに背筋を伸ばしているほどだ。


僕より先にルーに会っていたなら、ゼンが心から慕い尽くした相手はルーだったことだろう。


「対処が早々に出来れば原因探しが始まるが…、黙っておく必要もないかもな。」


「自分でバラしちゃうの?それはそれで面白そうね。」


庭先のテーブルに着席しながらルーと作戦会議になるまでは早かった。


リリーとゼンには席を外してもらい…、というか久しぶりの外だろうから静かなうちに満喫してきたらいいと気休め程度の暇を渡したのである。


でもこれが悪かった。


いや、リリーたちが居てどうにかなったかも怪しいが僕の平和ボケはルーに見破られていたのだ。


つまり、


「ねえ、もっと面白いことがあるわよ?」


「…なんだよ?」


「あたしの国にあなたを拉致するの。」


「…は?」


数秒の思考停止を狙われた。


そう、ルーは前もって準備していたのだ。


この瞬間を待ち侘びていたように僕を誘拐する手筈を整えて現れたのだ。


それに気づいたのは悲しいかな、気絶させられる数秒前だった。


その直後には目の前が暗くなって意識が途切れていた。


だから、


「ティアちゃんったらこんな初歩的なことも見落としちゃうほど平和ボケしてたのね。環ちゃんの頃だと考えられないほど無防備だわ。まあそこが可愛いんだけれど…。」


ルーが気を失った僕を覗き込んでにこやかに言い放つことなんてもちろん聞こえてなかったし、


ラビットが僕を気絶させた張本人であり、


「俺からすれば前世の頃から口ばかり達者で、生意気なこいつは気に食わなかったから構わないが…。本当に誘拐するのか?」


「あら、怖気付いたの?らしくないわね迅(しゅん)」


「まさか。悪巧みしてる椿を拝んでるのも結構好きだし良心が痛むこともないんだが…。」


まさかルーが散々いじめて文句を言っていたラビットが同じ転生者で、しかも椿の前世の恋人だったなんて。


意識さえあれば寝たフリしたまま作戦を考えただろうに、


「でもこの子を慕っているあの魔法使いたちが心配?」


「お前が心配なんだよ。」


「…はい?」


キョトンとするルーは椿だった頃もそうだが、自分への危害にはかなり無頓着だった。


まあ仕方ない。女王様なのだから。


椿の身を案じるのは椿に唆されたり、惚れ込んだ周りの男たちなのだ。


僕と違って椿は自分への危害なんてあってはならないとしか思ってない。


つまり他力本願なのである。


だからこそ僕が仕返しを成功させるといつも鬼の形相で憤慨し、また仕返しされていたのだ。


こういうところはやっぱり椿のままなのだろう。


キョトンとしてよくわかっていない椿の様子に迅…、もといラビットがため息をついていた。


「腕の立つ人間がこいつのそばに居たんだ。取り返そうとするに決まってる。その時、お前が実行犯だと分かったら?報復をされるのは椿だろう。」


気絶した僕を肩に乗せながら前世とは違う見た目で心配を口にする迅。


でも、


「そうね。だから守ってくれるんでしょう?」


あなたが、と椿は当然のように信頼している眼差しを向ける。


だから安心じゃない?と態度が語る。


そう、椿のスタイルそのものだ。


だから男は籠絡されてしまう。


美しい見た目で信頼を置かれ、頼られることに心を揺さぶられる。


椿からすればそんなの当たり前のことで、みんなに言ってることだが、


でもそれを特別感たっぷりな状況で言っているのだから本当に悪質な奴だ。


まあ、


「守ってやってもいいが、その代わり俺に何をしてくれるんだ?」


迅が椿の恋人で居続けられた理由は、


「…っあたしの信頼を得ておきながらそれじゃ足りないって言うの?!」


「当たり前だ。要約すればタダ働きじゃないか。俺は無駄が嫌いなんだよ。信頼を得て喜んでタダ働きする奴がいいならほかをあたってくれ。」


「誰のためにこんなことしてると思ってるの?!」


「自分のためだろう?俺を理由にするな。お前が俺を欲しがってるんだ。」


フンと言い切る迅、もといラビットは前世から椿の限りない理解者であり1番の敵でもあった。


だから恋人が出来ていたのだ。


「じゃああんたはあたしが欲しくないってことね!分かったわ。それならティアちゃんをこのまま置いて帰りましょう。あたしは政略結婚して、あなた以外の夫を迎えるだけだわ。」


泣きそうな、悔しそうな椿が吐き捨ててとっとと行ってしまおうとするが、


その腕を迅が掴んで引き寄せるなり、強引に口付けていた。


驚く…ことはなく椿はガリっと迅の唇を噛んで拒絶し、突き放そうとしたが、


「…っ!」


慣れている迅もまたその血を絡め取って口づけを続けるのである。


「どういうつもり?!こんな時にキスの気分じゃないのよ!離して!!!」


「素直にお願いできないのかお前は。」


「はあ?!」


「別に女王にならなくたっていいんだ。2人で逃げることもできるのにお前が納得しなかったんだろう。それに付き合ってるのになんでいい草だよ。」


「あたしの我儘を聞かない男は願い下げよ!」


「だから聞いてやるから、素直にお願いしろって言ってるんだろう?もちろん代わりに俺も好きにさせてもらうが。」


「あんたって生まれ変わってもそんななの?!腹立たしい!!!結局あんただってあたしに執着してるんじゃない!それをあたし1人のわがままみたいに言わないでよ!!」


フーーッ!!!と威嚇する白猫のように椿が感情的に喚く存在なんて前世のころから迅だった。


生まれ変わっても2人は相変わらずらしい。


「…かわいい。」


「はあ?!」


キーキー言ってる椿の怒りながら涙目をしていた姿に、迅はフッと笑ってすり寄っていた。


椿はされるがまま甘やかされるような手つきに戸惑うのだ。


「なんなのよ…!あたしはまだ怒って、」


「俺がお前に執着してないわけないだろう?だからこうして付き合ってやってるのに、まるで俺ひとりの我儘みたいに言ったのは椿が先だった。」


「う…、」


「俺がギャンギャン怒らないだけで腹立たしさは理解したようだからもう一度言うぞ。タダ働きはごめんだ。お前に加わるだろう危害の一切に神経を研ぎ澄ませろなんて冗談じゃない。そもそもこんな無謀なこと最初から反対だった。俺は極力、安全な道を行きたいタイプなんだよ。率先して椿を失う確率が高い道なんて行きたくない。」


要約すると迅はものすごく心配しているし腹立たしいし、なにより椿を取られたくないってことである。


真顔で言い切った迅に少なからずほんのりと顔を赤らめて俯いてしまう椿も椿だ。


なんだこのバカップルは!


僕が起きてさえいれば突っ込むのも面倒で放置するわ!!!!


聞くに耐えないからな!


「そこは問題ないわ。元々1人で進める気はなかったもの。」


「どういう意味だよ。」


椿が冷静さを取り戻したのか、迅を見上げながら深く眠っている僕の顔を撫でていた。


「拉致が成功してティアちゃんが目を覚まし、状況把握できればあたしの作戦をすべて悟るでしょう。そうなれば盤上を動かすのはあたしじゃなくティアちゃんになる。あたしの希望通りのチェックメイトをこの子ならしてくれるわ。」


「………妹への信頼の仕方が悪質だな。」


「あなたがそれ言うの?」


「俺は弟を使うような真似はしない。」


「使えないから使わないだけじゃなくて?」


小首を傾げて素直な疑問を口にする椿。


こういうところは悲しいかな、僕と椿が唯一似ているところだと思う。


家族だから信頼するなんてことはない。


家族だから、なんて理由もない。


使える人間かどうか、利用するに値するか、信頼はそうゆうものだと思ってる。


「……おまえって、」


「取り敢えずさっさと国に帰りましょう。迅…いえ、ラビットをあたしの理想通りの形で手にするためにはティアちゃんが必要なのよ。」


ムンと言い張る椿、もといルーに迅は言葉をため息に変えていた。


まあ仕方ない。


家族を含める他人に対して僕と椿は合理的且つ目的のための駒のように利用する。


それが僕らの信頼だ。


けれど一度懐に入れた…、つまり好きな人間に対してはとことん甘え切ってしまう。


僕と椿はお互いに好意なんてものはない。


単純に限りなく自分の敵になれる奴だと認識している反面、お互いの能力の高さも知っているから利用している。


今回もその性格ゆえの出来事である。


迅がため息で逃した言葉を敢えて翻訳するとしたら、お前って…


『俺以外の人間には本当に容赦ないな。』


だと思う。


まあだから惚れ込んでいるのだろう。


椿の容赦の無さは僕からすれば今更だが、けれどその純粋な悪意を知っているからこそ、


迅にだけ見せる椿の純粋な好意がよほど甘く思えてしまうのも確かだろう。


取り敢えず、目覚めた僕のひと言目は勿論、


「やりやがったな椿ッッッ!!!!」


悪態だったのは言うまでもない。




小噺

生明ゆめの気まぐれ短編集

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